2012年3月12日月曜日

訪問リハの世界に来て感じること

病院勤務から訪問リハの世界に来て、もう半年が経ちます。
 とても忙しく、日々の業務に頭が働かなくなりそうですが、やらないといけないことは増える一方で、言葉だけ、考えだけが先行して、行動に移すことができていません。
 おそらく、行動に移すことができていないのではなく、行動に移すことがしんどいので、やろうとしていないだけだと思います。
 疲れたとか、時間がないとか、言い訳しているだけでしょう。
 いざ、強制的にやれと言われれば、切迫した状態になれば、時間を作ることもできるでしょう。
 ここ何ヶ月か弱い自分がいます。
 そろそろ、切り替えないといけません。

 訪問リハの世界にどっぷり浸かっています。
 この世界に半年しかまだ浸かっていませんが、病院勤務では気づけなかったことがたくさんあります。
 当たり前ですが、自宅に帰っても治療を必要とする人はたくさんいるということを改めて知りました。
 病院に勤務していた時は、どんな状態であっても、退院すれば、「はい、さよなら」といった感覚となってしまいがちでした。
 実際、自宅に帰った後や転院した後の経過を知ることは、わずかでした。
 訪問では、そういった方達を対象とします。
 私が担当している利用者さんは退院した中の一握りだと思いますし、病院のリハビリテーションのみで、十分、生活や仕事に復帰できる方はたくさんおられると思いますが、意外に困難な状況で自宅へ帰宅される方が多いように感じます。
 特に整形外科疾患後の利用者さんは、入院期間が短く、こんな状態で退院するのかという方を多く見ます。
 病院での治療の在り方を少し考えてしまいます。
 確かに医療的な処置は終了していますが、生活できる能力ではない。
 病院と言った整備された環境の中でも一人で生活できる状態ではないのに、退院。
 確かに診療報酬が変化し、早期退院となってきていますが、それでいいのかと疑問を抱いてしまう。
 その中で、病院で関わるセラピストは焦りが出るのかもしれませんし、パフォーマンスでもできるということを重要視してしまうのかもしれません。
 そう考えると訪問リハがその受け皿になるしかないと自分は考えるのです。
 早期離床、早期退院してきた利用者さんを自宅の中で、安全な状態の生活を確保しながら、ゆっくりと機能の回復をしていく。
 人は生まれてから歩くまでに1年かかります。
 それもよちよち歩きまでの期間です。
 そのように時間がかかる能力を回復していくために、そのような短い時間で再獲得できるように私は思えません。
 訪問リハは1度の治療時間や1週間の合計した治療時間は回復期の病棟には負けるかもしれませんが、時間をかけてじっくり計画していき、利用者さんのニーズに合わせて、回復していくことはできると思います。
 そのような点では、リハビリテーションを行う上では、とても良い環境なのかもしれません。
 しかし、今回の改定では訪問リハに1週間に20分1単位を6単位までしか行えないといった回数制限をつけられてしまいました。
 回復期ではあんなにリハビリテーションをするのに、自宅に帰ったらリハビリテーションは少なくて良いというのは、とても矛盾しているように思います。
 また、訪問リハ=慢性期、維持期といったイメージが強いのかもしれません。
 おそらく、時代の変化に伴って、一般的に回復期と言われる利用者さんもたくさんおられますし、急性期の利用者さんだっておられます。
 私は一般的に維持期と言われる利用者さんであっても、十分機能的に回復できると思います。
 そう考えると訪問リハというのは、様々な疾患や病期の利用者さんがおられるのです。
 それに対して、リハの回数制限は如何なものかと思います。
 選択が狭まるということは利用者さんにとってこの上ない不利が生じるのです。
 それは、予防を進めていく方針と逆行しています。
 予防するということは、何も健康な状態の方だけでなく、再度疾患を発症させないことや怪我をさせないことでもあるのです。
 訪問リハビリテーションは、とても重要な位置を占めていくように感じます。

 私は、訪問リハに来る前は、そこまで魅力的だと感じていませんでしたが、その世界に浸かることで、リハビリテーションの中の重要性や魅力を感じますし、可能性の高さを感じます。
 これからは、もしかすると訪問リハが最前線であり、最先端になるのかもしれません。
 訪問リハから生まれるものがたくさん出てくるように思います。
 今まではある期間だけのリハビリテーションだったのが、とんでもなく長い時間のリハビリテーションを受けることによって、どのように利用者さんが変化するのか。
 リハビリテーションの可能性を出せるのではないかと、自分自身は思います。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めてコメントさせて頂きます。理学療法士として現在訪問リハビリテーションに従事させていただいているものです。

現状の医療制度の流れを見ると、おそらくこれからの病院でのリハビリは急性期あるいは超急性期で退院を余儀なくされる方が増え、在宅での介護・介護予防の対象が拡大していくと思っています。
その中で、訪問リハで量は少ないものの、長い期間関わることによって徐々にではありますが改善し続けている利用者さまも実際におられます。やはり自宅だとモチベーションの上がり方も違うと感じます。個人的にはもっと、訪問リハビリは量的にも充実させて欲しいと感じます。

一方で、それは現場での感覚に過ぎず上(この場合厚労省になるのでしょうか?)から見ると「客観的指標」として「リハビリの効果があった」と示すことが出来ないと中々その必要性を訴える事が難しい部分も多いように感じます。病院などでは割と尺度に使っていた且つ効果として示しやすいFIMも、在宅では中々適用は難しいと感じています。動作の「質」を上げる事の重要性はセラピストとしては感じますが、中々それを他職種一般に求めることは難しいと感じます。

個人的に、訪問リハビリが最前線になるのでは?とおっしゃられる先生の意見には賛同します。今後もおそらく在宅での領域のリハの需要は拡大すると思っています。
一方で、科学的なエビデンスや効果を客観的に示しにくい(と感じる)訪問リハビリが主体になって、本当に現時点でそれは良い事なのか?という部分も危惧しています。

何にせよ、訪問リハビリは理学療法士の中でもまだこれから開拓していかない分野だと感じます。ただしそれを外に広めるような活動は、個々のセラピストが考えていかねばならない問題だと感じています。
乱文失礼致しました。

高木 泰宏 さんのコメント...

コメントありがとうございます。
 仰られる通りで、私は短い時間しか私は訪問リハで働いていない立場ですが、家に帰っていれば、ADL自体は何とか自立されている方を度々見受けます。できるとかやっているだけでは、なかなか評価が難しいように思います。
 どのようにやっていて、どれくらいの時間がかかって、どれくらいの努力が必要なのかということまで考慮した指標がないと日常生活を点数化することは難しいように思います。
 ただ、ある一つのパフォーマンスに限ったものでは評価指標はたくさんあるのではないかと思います。
 例えば、time up & go testなどは簡便ですし、場所もそう多くとりません。上肢のパフォーマンスを測定するテストも探せば、たくさん出てきそうです。
 また、主観的な満足度や主観的な生活の努力感を点数化したものをデータとして残していくことも一つの方法のように思います。
 これらの複合的に測定することも、重要だと思います。
 訪問リハは期間が長いため、そのようなデータを縦断的にとれるという点で、新たなエビデンスを作ることができるように感じます。
 私も何を指標にしていくかをしっかりと考えていきたいと思っています。

 動作の質のお話しですが、私はセラピスト以外の職種の方のほうが、実際の動きの質をよく知っておられるように感じます。他職種と協力することによって、実際の動作のフィードバックを頂き、それに応じたプランを立て、プランから導き出される方法の検討を他職種と行い、一人の利用者さんに多くの人間が関わることができれば、多くの視点で考えることができ、より良いサービスが提供できるのではないかと考えています。

 訪問リハはセラピストがすすんで動けば、周りが応えてくれる環境にあるように思います。自分さえ時間を上手く作れば、他職種と協同することが可能ように感じています。また、縦断的なデータを測定していくことで、新たなエビデンスを作ることも可能であるように思います。また、そのための客観的な指標となるものを吟味していかないといけないように思います。

 ご丁寧にコメントいただきありがとうございます。